A Summer Morning in Venice

 ホームページ特別企画、SPECIAL MOVIE 第八弾を公開しました。今回は小作品『A Summer Morning:ヴェネツィアの朝』です。ロード・ムービー「One Step Beyond」(05年) 第一章 イタリア編 からの抜粋。今回の公開に当たって再編集した09年バージョンです。

 頬をかすめる風が、夏の始まりにしてはひんやりと透き通って心地良く感じる早朝五時、薄暗いサン・マルコ広場にひとりぽつりと佇んでいました。昼間の喧噪が嘘のように人気はまばらで、石畳に群がるハトの羽音と鳴き声だけが、まるで一枚の巨大な絵画のような幽玄な世界一面に響き渡っています。

 「世界で最も美しい広間」とナポレオンが讃え、中世以降、政治・経済、文化、宗教の中心となっていたこの広場をパノラマで見渡すと、はて自分はいつの時代に生きているのだろうかと奇妙なタイムスリップに陥りました。ビザンティン・ロマネスク建築の代表作であるサン・マルコ寺院は繁栄期の輝きを取り戻し、ドゥカーレ宮殿にはまだ総督が優雅に暮らしているかのようです。
 カフェ・フロリアンのテラスで覚いでいる老人が、珍しそうにこちらを眺めています。宮殿の地下牢から脱走したカサノヴァの生まれ変わりがひょっとしたら彼なのかもしれないと妙な妄想を抱きつつ、目前の三脚固定されたビデオカメラを眺めて、今自分は旅の最中なのだという現実にようやく引き戻さました。

 サンティッシマ・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会やサンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会、サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会を始めとして、数々のバロックやゴシック様式の歴史的建造物が立ち並ぶ、水の都ヴェネツィア。優雅な景観の裏側では、しかしながら深刻な問題も抱えています。

 地球温暖化や産業地帯の乱開発による海面上昇と地下水の減少による地盤沈下が年々深刻な問題となっており、街中で一番海抜の低いサン・マルコ広場を中心に秋冬のアクア・アルタ(高潮)による冠水の頻度が増加してきています。これに対処すべく、周辺のラグーナと呼ばれる潟湖の三箇所に水門を作り水位をコントロールする「モーゼ計画」が七〇年代に発案され着工したものの、公共事業派と環境派との諍いで事業は難航しています。
 また観光地化の拡大の影響で地元の不動産価値が急騰し、島の若者が住宅の購入を諦めて郊外への移住が増えた結果、島には老人しか残されておらず、島の平均年齢は五十歳。人口の三分の一は六十歳以上という超高齢化社会も深刻な問題となっています。地価の高騰以外にヴェネツィアには魅力的な産業がないというのも、若者の人口流出の大きな原因です。この島では労働人口の半数が観光産業に従事しており、過去の遺産で食べていくしかないのが現実なのです。

 このままでは市民生活の機能が停止し、本当にただの歴史的なテーマパークにすらなりかねません。ヴェネツィアはそこで生活を営んでいる人々の現在があるからこそ、魅力のある島だと思うのです。

 
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『A Summer Morning:ヴェネツィアの朝』
※ 映像作品「One Step Beyond」(2005年)より
映像と音楽:こいで みのる
制作:2005年(09年再編集)
再生時間:1分04秒
映像:カラー
音声:ステレオ
アスペクト比:4:3
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Copyright(c) 2009 spruce & bamboo. All Rights Reserved.




【関連リンク】
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●本記事について

本記事はポピュラー音楽理論の基礎、およびフラメンコの基本的な演奏技術を理解している前提で進めていきます。双方とも関連書籍や資料が豊富に入手可能です。
各コード・スケールの表示については、楽譜でなく英数字(例:短二度はm2)を用いた表組にて対応させていただきました。作譜の時間が取れなかった理由もあるのですが、ギタリスタに取っては表組の方が理解しやすい面もあろうかと思います。
本記事はフラメンコ愛好家に向けての公開をその目的としております。参考文献を引用している部分もありますが、個人的な見解で記述した部分も多くありますので、無断で商用利用および各種論文に流用することはご遠慮ください。
本記事の内容により第三者が損害や不利益を被った場合でも、当方では一切責任を負わないものとします。記事の内容については自己責任にてご判断ください。



●応用編について

 さて今回の応用編では、フラメンコで使用されるスパニッシュ・8ノート・スケールが、ポピュラー音楽理論の中でどのように展開されているのかを検証したい。
 基礎編でフラメンコは「モード」でコード・スケールを捉えることが大切だと述べたが、ポピュラー音楽側からフラメンコへの接近という点から見ると「調性」でコード・スケールを捉えることが重要となる。調性で考える場合はフリジアン・スケールとスパニッシュ・8ノート・スケールの性格の違いを明確に把握し、用途に応じて使い分けるという必要がある。



●スパニッシュ・8ノート・スケール

 基礎編でも触れたように、フラメンコで多用されるコード・スケールは、フリジアン・スケールを原型としたスパニッシュ・8ノート・スケールである。

Por Medio

A スパニッシュ・8ノート・スケール
構成音 Tonic m2 m3 M3 P4 P5 m6 m7
テンション   ♭9 #9       ♭13  
Key in A A A#(B♭) C C#(D♭) D E F G
コード・トーン  Tonic, M3, P5, m7
アボイド・ノート  P4
特徴 ドミナント7th・スケール。短調のV7での使用が基本

【応用編備考】
(1) アボイド・ノートのP4は、M3 をオミットすることでsus4として使用可能。
(2) dim5の使用:オルタード・テンションで統一されているという点では、理論的にオルタード・ドミナント・スケールとの共通性が見られるため、P5の代わりにdim5を使用する場合がある。



●調性上でのスパニッシュ・8ノート・スケール

 スパニッシュ・8ノート・スケールは、ドミナント7th・スケール(ドミナント・コード V7 や各種セカンダリー・ドミナント・コードの拠り所になるスケール)のひとつであり、ポピュラー音楽においては短調の V7 で使用するのが基本的な使い方である。同じ短調の V7 を基本とするドミナント7th・スケールとしては、ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ・スケール(※2)、オルタード・ドミナント・スケール(※3)が挙げられる。
 フリジアン・スケールについては、長調の IIIm7 で使用するのが基本で、短調においての旋律的短音階(メロディック・マイナー・スケール)《上行》での IIm7、自然的短音階(ナチュラル・マイナー・スケール)の Vm7 でも特殊な例として使用されるのだが、今回は省略させていただく。


(1)調性上での各コードスケール【長調】
ダイアトニック・コード セカンダリー・ドミナント・コード
I イオニアン I7 ミクソリディアン
IIm7 ドリアン II7 ミクソリディアン
IIIm7 フリジアン III7 ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ
スパニッシュ・8ノート
IV リディアン IV7 リディアン・ドミナント
V7

ミクソリディアン



VIm7 エオリアン VI7 ミクソリディアン♭6th
VIIm7(♭5) ロクリアン VII7 ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ
スパニッシュ・8ノート
オルタード・ドミナント

【備考】 ダイアトニック・コードの V7、セカンダリー・ドミナント・コードの I7 では、意識的な調性外音の使用(テンションのオルタード化を含む)、またセカンダリー・ドミナント・コードの VI7 では、後続するコードに基づく考え方で、スパニッシュ・8ノート・スケールが使用されるのだが、特殊な使い方のため今回は例外として削除した。


(2)調性上での各コードスケール【短調】
ダイアトニック・コード セカンダリー・ドミナント・コード
Im ナチュラル・マイナー (エオリアン)
ハーモニック・マイナー
メロディック・マイナー<上行>
ドリアン (※1)
I7 ミクソリディアン♭6th
ミクソリディアン (※1)
IIm7(♭5) ロクリアン II7 ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ
スパニッシュ・8ノート
オルタード・ドミナント
♭III イオニアン
リディアン (※1)
♭III7 ミクソリディアン
リディアン・ドミナント (※1)
IVm ドリアン IV7 ミクソリディアン
V7 スパニッシュ・8ノート
ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ
オルタード・ドミナント
ミクソリディアン♭6th (※1)


♭VI リディアン ♭VI7 リディアン・ドミナント
VIm7(♭5) ロクリアン
ロクリアン#2 (※1)
VI7 ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ
スパニッシュ・8ノート
オルタード・ドミナント
♭VII(7) ミクソリディアン    
VII dim 名称なし VII7 オルタード・ドミナント

【備考】 セカンダリー・ドミナント・コードの I7 では、後続するコードに基づく考え方で、スパニッシュ・8ノート・スケールが使用されるのだが、特殊な使い方のため今回は例外として削除した。


※1. 変則的なもの

※2. ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ・スケール
構成音 Tonic m2 M3 P4 P5 m6 m7
テンション   ♭9       ♭13  
Key in A A A#(B♭) C#(D♭) D E F G
コード・トーン  Tonic, M3, P5, m7
アボイド・ノート  P4
別名称 フリジアン・メジャー・スケール、ユダヤ・スケール、スパニッシュ・ジプシー・スケール(長調)、フリジアン・ドミナント(長調)

※3. オルタード・ドミナント・スケール
構成音 Tonic m2 m3 M3 aug4/dim5 m6 m7
テンション   ♭9 #9   #11 ♭13  
Key in A A A#(B♭) C C#(D♭) D#(E♭) F G
コード・トーン  Tonic, M3, m7
アボイド・ノート  なし



●ディミニッシュ・コードとセカンダリー・ドミナントコードの関係

 ディミニッシュ・コードが、セカンダリー・ドミナント・コードと同等な機能を持つことがあり、おもに上行進行によるパッシング・ディミニッシュ・コードがこれに該当する。
 考え方としては、I → VI7(♭9) → IIm7(例:C → A7(♭9) → Dm7)の場合、セカンダリー・ドミナント・セブンスである VI7(♭9) の基音を省略すると #Idim(C#dim)と同じ和音構成になることから、I → I#dim → IIm7 というパッシング・ディミニッシュの進行に置き換えられる。その場合、I#dimで使用するコード・スケールは「#I 合成ディミニッシュ・スケール = VI7 スパニッシュ・8ノート・スケール」となるのである。

 各ディミニッシュ・スケールと同音列のスパニッシュ・8ノート・スケールの一覧を以下に示すが、以下の点にご注意いただきたい。

【注意点】
 パッシング・ディミニッシュの性格上、長調でのディミニッシュ・スケールは、コード・トーンと I メジャースケールの構成音との合成となり、短調でのディミニッシュ・スケールは、コード・トーンと自然的短音階( I エオリアン・スケール)の構成音との合成になる。そのために両方の調性とも、M2 が m2 に、P4 が dim4 に変化した合成ディミニッシュ・スケールと考える。

・ディミニッシュ・スケール:Tonic - M2 - m3 (#9) - P4 - dim5 - m6 - M6 - m7
・合成ディミニッシュ・スケール:Tonic - m2 - m3 (#9) - dim4 - dim5 - m6 - M6 - m7(M2がm2、P4がdim4に変化)


(1)上行進行(長調)
同等の機能 元スケール 同等スケール 代表的な進行
#I dim = VI7 #I 合成ディミニッシュ VI7 スパニッシュ・8ノート #I dim → IIm7
#II dim = VII7 #II 合成ディミニッシュ VII7 スパニッシュ・8ノート #II dim → IIIm7
#V dim = III7 #V 合成ディミニッシュ III7 スパニッシュ・8ノート #V dim → VIm7
#IV dim = II7 #IV 合成ディミニッシュ II7 スパニッシュ・8ノート #IV dim → V7

(2)上行進行(短調)
同等の機能 元スケール 同等スケール 代表的な進行
#IV dim = II7 #IV 合成ディミニッシュ II7 スパニッシュ・8ノート IV dim → V7
IV dim → Vm7
VII dim = V7 VII 合成ディミニッシュ V7 スパニッシュ・8ノート VII dim → Im
VII dim → I7

(3)下行進行(変則的)
同等の機能 元スケール 同等スケール 代表的な進行
♭III dim = II7 ♭III 合成ディミニッシュ(※1) II7 変形スパニッシュ・8ノート (※2) ♭III dim → V7

※1.  この下行進行のみ変則的で、M2からm2の変化がなく、つまり構成音が、Tonic - M2 - m3 (#9) - dim4 - dim5 - m6 - M6 - m7 となる。
※2.  スパニッシュ・8ノート・スケールの m6 が M6 に変化したもので、名前のないスケールのため、ここでは変形スパニッシュ・8ノート・スケールとした。


 (1)のような長調でのディミニッシュ・コードおよび、(2)のような短調でのディミニッシュ・コードのコード・スケールから引き出されるドミナント・スケールは、すべてスパニッシュ・8ノート・スケールである。(3)は変則的なドミナント・スケールだが、このようなコード・スケールの共通性は、両コードの機能的な結び付きを明らかにしており、この種のパッシング・ディミニッシュ・コードが、各セカンダリー・ドミナントの代表コードの一種と考えられる。
 さらに、パッシング・ディミニッシュ・コードがドミナント・モーションを作るという性格(今回の場合はマイナー7th・(♭5)コードとセカンダリー・ドミナント・コードによる)から、セカンダリー・ドミナント・セブンスを分割して、これらのドミナント・スケールからロクリアン・スケールまたはロクリアン#2・スケールを引き出すこともできるのだが、今回の意図から外れてしまうので省略させていただく(例:#I dim → IIm7 が VI7 → IIm7 となり、さらにVI7を IIIm7(♭5) → VI7 で代替した場合に III Locrian を使用する)。



●テンションのオルタード化

 ナチュラル・テンションのみで構成されているミクソリディアン・スケールからのテンションのオルタード化、および代理コードへの発展は二種類の経路があるが、スパニッシュ・8ノート・スケールを含む方を以下に記す。オルタード・ドミナント・スケールが代理コードへの最終的な中継点となる。

(1) ミクソリディアン
  [ Tonic - M2 (9) - M3 - P4 - P5 - M6 (13) - m7 ]
    ↓
(2) ミクソリディアン♭6th:[ 13th →♭13th ]
  [ Tonic - M2 (9) - M3 - P4 - P5 - m6 (♭13) - m7 ]
    ↓
(3) ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ:[ 9th →♭9th ]
  [ Tonic - m2 (♭9) - M3 - P4 - P5 - m6 (♭13) - m7 ]
    ↓
(4) スパニッシュ・8ノート・スケール:[ #9th追加 ]
  [ Tonic - m2 (♭9) - m3 (#9th) - M3 - P4 - P5 - m6 (♭13) - m7 ]
    ↓
(5) オルタード・ドミナント:[ P5 → dim5、P4→aug4 (=#11th) ]
  [ Tonic - m2 (♭9) - m3 (#9th) - M3 - aug4 = dim5 (#11) - m6 (♭13) - m7 ]
    ↓
(6) 《代理コード》短5度上 リディアン・ドミナント:[ dim5 = aug4から並べる ]  
  例)C オルタード・ドミナント → G♭リディアン・ドミナント



●スパニッシュ・8ノート・スケール上のアッパー・ストラクチャー・トライアド

 アッパー・ストラクチャー・トライアド(略してUPT.)は、今回は「分子のコード/分母のコード」で表記する。

UST. 説明 凡例
♭IIm 短2度上の短三和音 G7(9・♭13) → A♭m/G
♭III 短3度上の長三和音 G7(#9) → B♭/G
♭VI 短6度上の長三和音 G7(#9・♭13)→ E♭/G
sus4系統
♭II 短2度上の長三和音 G7sus4(♭9・♭13) → A♭/G
IVm 完全4度上の短三和音 G7sus4(♭13) → Cm/G
♭VIIm 短7度上の短三和音 G7sus4(♭9) → Fm/G

 テンション・サウンドの内、#9thはトップ・ノート(最高音)として利用されることが多い。特殊なテンション・サウンドとしては、#9thの肉声での使用や、♭9thと#9thとの共存などが挙げられる。#9thを含むsus4サウンドのみは実用的でないため、これを省略する



●アンダルシア終止形のバリエーション

 さて最後になるが、フラメンコで使用されるアンダルシア終止形を、ポピュラー音楽的にアレンジする場合のバリエーションを列記したい。
 アンダルシア終止形のバリエーションは、代理コードで派手に変化するという性格のものではなく、ベース・ライン・クリシェ(半音下行)を用いたシンプルな型になる。フラメンコの楽曲でも、パコ・デ・ルシアの "Cepa Andaluza"、"Los Pinares" 等で、ベース・ライン・クリシェが効果的に使われている(【注】最近のモダンなフラメンコでは、アンダルシア終止形の解釈を柔軟に広げて自由に表現しているように思える。詳しい考察は今後の課題としたい)。
 なお今回は、モードではなく調性という見方で捉えているため、最初のコードをトニックと考える。

基本進行: Im →♭VII →♭VI → V
( Dm → C → B♭→ A ) ※ Key in Dm

 
バリエーション1: Im →♭VII7 →♭VI7 → V7
( Dm → C7 → B♭7 → A7 )
バリエーション2: Im・V7/VII → Im7/♭VII → Im6/VI → ♭VI → V7 ※分数表示:コード/ルート音
( Dm・A7/D♭→ Dm7/C・Dm6/B → B♭7 → A7 )
バリエーション3: Im・ImM7/VII → Im7/♭VII → Im6/VI →♭VI → V7
( Dm・DmM7/D♭→ Dm7/C・Dm6/B → B♭7 → A7)
バリエーション4: Im・V7/VII →♭VII・IV7 →♭VI7 → V7
( Dm・A7/D♭ → C・G7 → B♭7→ A7 )

【備考】
(1) Im6/VI = VIm7(♭5)(例:Dm6/B = Bm7(♭5) )
(2) フラメンコでのベース・ライン・クリシェの一例(パコ・デ・ルシア "Cepa Andaluza" より)Cepa Andaluza

(3) ♭VI をピボット・コードとして平行長調へ転調する方法もよく使用される(♭VIM7 は平行調のIVM7。共にサブドミナント・コード)。
凡例:


(4) アンダルシア終止形と構造的に似ているものに、長調のリディアン・スケールで展開されるリディアン終止形が挙げられる。
調性上:I → VIIm → VIm → V(Dm → C#m → Bm → A)




●あとがき

 二回に渡って足早にフラメンコのコード・スケール理論を論じてみましたが、もちろんこれはフラメンコの多様な側面のひとつの見方に過ぎず、また違う側面から眺めてみれば新しい気付きがあることでしょう。
 フラメンコとは奥が深くかつ普遍性を持った特別な音楽だと思います。今回の連載を手がかりとして、アフィショナードたちのさらに深い洞察に踏み込むきっかけとなれば幸いです。

Illust 長い歴史の中でヒターノが受け継いできたフラメンコという芸術音楽。カンテ、バイレ、トケという三位一体が確立した頃にはすでに完成されていた音楽だったことに、フラメンコの偉大さを感じさせられます。先人の天才たちが、理論的にはもとより、本能的・直観的に切実な想いを表現に昇華させ、それが時代の流れに動じないスタンダードとして現在まで通用しているところに、民族の持つ血の奥深さとプライドを感じ、畏怖の念すら湧いてきます。フラメンコもクラシック音楽同様に、時代を超えてしまった普遍的な何かを持っているように思えてなりません。

 フラメンコギターの表現が劇的に変化したのは、パコ・デ・ルシアの影響が大きいと言われています。パコ以降のフラメンコギター界はポピュラー音楽理論との融合により、複雑な和音構成やアレンジといった知的探究心に富んだ作品が増えていくことになります。
 ポピュラー音楽やジャズ、フュージョンとの融合がフラメンコの進化形であるかどうかは、人それぞれの判断に委ねたいと思いますが、理論は音楽の共通言語でもあり、他ジャンルの音楽との融合が試みられたからこそ、フラメンコは今日まで生き長らえてきたと言っても過言ではありません。それはフラメンコがアンダルシア地方というハイブリッドな文化土壌の中で培われてきた音楽であることに因果があるように思えるのです。

 思うに流行廃りというのは、時間軸で螺旋のように繰り返されるものです。新しい表現が出現し、それが行き詰まるとまた原点に回帰する。表現の世界だけでなく、経済社会も、そして個々の人生でも同じことが言えると思います。複雑かつ斬新さを知的に探求してきた人は、シンプルな原点に回帰することの必要性を感じるでしょうし、まだ吸収するものが多い人は、未知なる世界にさらなる挑戦を挑むことでしょう。正解はひとつではなく、人生の数だけフラメンコがあるのです。

 商業主義的なポピュラー音楽に食傷気味で、リスナーとしてもプレイヤーとしても音楽全般から離れつつあった自分を、再度表現の世界に連れ戻してくれたのがこの「魂の音楽」フラメンコと言っても過言ではありません。ドゥエンデ探索の旅が再び始まりました。


 こいで みのる



●参考文献およびホームページ

・コード進行 ハンドブック/北川祐 編著(リットーミュージック)※88年版
・コード・スケール ハンドブック/北川祐 編著(リットーミュージック)※89年版
・実践コード・ワーク 理論編/篠田元一 編(リットーミュージック)※91年版
・フラメンコの芸術/ドン・E・ポーレン 著 青木和美 訳(ブッキング)
・Wikipedia:Flamenco
・Wikipedia:Andalusian cadence





●本記事について

本記事はポピュラー音楽理論の基礎、およびフラメンコの基本的な演奏技術を理解している前提で進めていきます。双方とも関連書籍や資料が豊富に入手可能です。
各コード・スケールの表示については、楽譜でなく英数字(例:短二度はm2)を用いた表組にて対応させていただきました。作譜の時間が取れなかった理由もあるのですが、ギタリスタに取っては表組の方が理解しやすい面もあろうかと思います。
本記事はフラメンコ愛好家に向けての公開をその目的としております。参考文献を引用している部分もありますが、個人的な見解で記述した部分も多くありますので、無断で商用利用および各種論文に流用することはご遠慮ください。
本記事の内容により第三者が損害や不利益を被った場合でも、当方では一切責任を負わないものとします。記事の内容については自己責任にてご判断ください。



●はじめに

 さて、今回から二回に渡って「フラメンコのコード・スケール理論」を連載いたします。

 そもそもフラメンコは人から人への口頭伝承によって伝わってきた音楽であり、ギタリスタのトケ(伴奏)やソロ演奏においては、先人たちが作り上げた奏法やファルセータを日々習得することで引き出しを広げつつ、試行錯誤しながら自分なりの表現を模索していくことが一般的な習得法であり、実際のステージ演奏においては直観や感情を伴った即興性が大切とされるので、理論的に考える必然性はさほど大きくないと思います。

 しかし現在のフラメンコにおいては、ポピュラー理論、ジャズ理論、その他の新しい音楽的要素を取り入れ、複雑かつ多様化していることを鑑みると、理論的な側面から眺めてみることも有意義なことだと思います。
 ファルセータひとつ作るにも、理論的に考えることでさらに表現の幅が広がることに繋がると思いますし、ベース・ギターや鍵盤楽器、管楽器等、ギター以外の楽器のアンサンブルを加えたポピュラー音楽への接近、逆にポピュラー音楽からフラメンコへの接近においては、西洋のポピュラー音楽理論とフラメンコ音楽理論の両方の視点から考えることは大切なことのように思います。

 昨今のフラメンコのポピュラーやジャズ、フュージョンへの接近は、フラメンコという音楽のひとつの進化形なのかもしれませんが、そのモダンなポップ感覚によって、ジプシーが本来歌に込めていた切実な魂の叫びが薄れてしまわないかという危惧も感じ、この現状を手放しで喜んで良いものかと戸惑うこともあります。現在のフラメンコをBGM的に聴き流してしまうのは自分だけではないかと思います。古き時代の魂溢れるフラメンコを再度見直しつつ、理論を踏まえて、これからどんな表現を目指していくのかを自問することも、時には必要なことなのかもしれません。


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●フラメンコの成立

 アンダルシア地方は遠い昔のローマ時代から歌謡と舞踊が盛んな土地であり、イベリア半島の先住民イベロ族、フェニキア人,ギリシャ人,カルタゴ人,ローマ人、五世紀にはゲルマン人,八世紀〜一五世紀にかけてはアラブ人、一五世紀前後にはセファルディムと呼ばれたスペイン・ポルトガル圏のユダヤ人など、たくさんの民族が交錯して生活を営んでいた。

  Alhambra
  イスラム建築の傑作、グラナダのアルハンブラ宮殿。レコンキスタ後も異宗教の文化に敬意を払うこのアンダルシアの風土が、フラメンコという複合芸術を生み出す土壌であったのだ。
 文化の坩堝(るつぼ)であったこの地ではあったが、レコンキスタ直後の十六世紀にも、カスティーリャ王国は種族と宗教の純潔をさらに広める目的で、イスラム教徒以外の少数民族もスペインから駆逐することになった。キリスト教への改宗を拒んだ多くのユダヤ人と、タキーヤ(偽装棄教)のイスラム教徒は国外に追放され、また放浪していたヒターノは官憲たちに迫害され続け(一四九九年からカロルス三世がジプシー法を廃止する一七八三年までに、ロマの服装、言語、慣習を禁止する法令が何度も発令された)たが、首尾よく逃げ回っていたユダヤ人、イスラム教徒、そしてヒターノが、この大きな敵、王国の異端審問所に対して反骨精神から結束することとなった。
 彼らは人が住まない山岳地帯の洞窟でいくつかの集落を作ったり、セビージャのグアダルキビル河口近くにヒターノ社会を形成したり、またキリスト教徒の難民や反逆者も仲間入りをして、宗教や思想を超えて迫害されたものたちによる文化的共同体が形成され、そこでイスラム、ユダヤ、ビザンチン、キリスト、そしてロマ民族の故郷インド、パキスタンの宗教音楽や民族音楽が絡み合って、フラメンコというひとつの芸術が生み出されたことが想像できる。

 フラメンコが成立した時期は明確には定義出来ないものの、その原型は十六世紀頃から始まったと言われている。十世紀から十一世紀前半にかけてインド北西部を旅立ったロマ民族は、スペインでは一四二五年にサラゴサ、一四四七年にカタルーニャで確認されたという記録が残っており、フラメンコの成立にヒターノ(スペイン系ロマ民族はヒターノと呼ばれる)が関係している裏付けのひとつとされている。
 十九世紀半ばから二十世紀前半にかけて、フラメンコは黄金期を迎えた。特にカフェ・カンタンテ(クアドロ・フラメンコと呼ばれるフラメンコの演唱者の一座をアトラクションにした酒場)が、アフィショナード(愛好家)たちで賑わっていた十九世紀後半には絶頂期を迎え、クラシック技法をフラメンコギターに導入したパコ・ルセーナを継承した、ラモン・モントーヤという伝説のギタリスタの出現によりフラメンコギター独奏の時代が始まった。その後フラメンコは衰退の危機にさらされるが、時代を担う天才アーティストたちやアフィショナードたちの情熱で、なんとか現在まで生き長らえている希有な民俗音楽かつ芸術音楽なのである。

 またフラメンコには異文化の融合で生まれたものとは別に、正統なアンダルシア民謡に起源を持つパロも多く存在する。例を挙げると、トリジェーラス、バンベーラス、テンポレーラス、カレセーラス、ナーナス、カンパニジェーロス、マリアーナス、セビジャーナス、ベルディアーレス、ソロンゴ、グアヒーラス、ミロンガス、ビート、コロンビアーナス、ガロティンなど。さらにペテネーラスやサエタスは、ユダヤ人の音楽から由来している。



●コード・スケールの変遷

 さて本題に入ろう。フラメンコで使用されるスケールはフリジアン・スケールに長三度(M3)の音を加えたもので、現在のコード・スケール理論では「スパニッシュ・8ノート・スケール」と呼ばれる。
 メジャー・スケールが以下のように変化したものである。

(1) メジャー・スケールを長三度から並べる( F メジャースケールの M3 から並べる → A フリジアン・スケール
  Tonic(※1)- m2 - m3 - P4 - P5 - m6 - m7 (Key in A: A - B♭- C - D - E - F - G )
    ↓
(2) m3 → M3 に変化 A フリジアン・メジャー・スケール/A ヒジャーズ)(※2)
  Tonic - m2 - M3 - P4 - P5 - m6 - m7( A - B♭- C# - D - E - F - G )
    ↓
(3) フリジアンとフリジアン・メジャーが合体 A スパニッシュ・8ノート・スケール
  Tonic - m2 - m3 - M3 - P4 - P5 - m6 - m7( A - B♭- C - C# - D - E - F - G )

 (1)でメジャー・スケールを3度から並べた時に、ポピュラー理論におけるフリジアン・スケールでは、Tonicのコードはマイナーコードの Im(Am)もしくは Im7(Am7)なのだが、フラメンコではメジャー・コードの I(A)と考えることで、長調でも短調でもない独特の響きがもたらされるのである。
 Tonicをメジャー・コード化し(2)で短三度を長三度化(m3 → M3)することで、長調的な感じを持つフリジアン・メジャー・スケールとなり、(3)で再度短三度(m3)を加えることで、さらに短調的な感じも合わせ持った調性が不明瞭なスパニッシュ・8ノート・スケールとなる。

 西洋音楽で用いられる旋法は、「ド( I )を主音にする長調」と「ラ( VI )を主音にする短調」から成っているが、フラメンコはいわゆる「ミ( III )の旋法」と呼ばれる長調でも短調でもない独特の旋法により、あの寂しげなメランコリックな響きを醸し出すのである。一部のパロでは長調や短調も使用されるが(※3)、ソレア、シギリージャ、ブレリア、タンゴ等、大半のパロはこのあいまいな調性のミの旋法で成り立っている。ミの旋法はフラメンコだけでなく、地中海沿岸周辺(イスラム音楽やユダヤ音楽等)からインドまで広く用いられている。


※1.  ここでのトニックのコードは理論的には Im(Am)もしくは Im7(Am7)なのだが、フラメンコでは I(A)と考える。ヨーロッパの古典音楽や教会音楽で用いられていたピカルディ・サード Picardy third の影響なのだろうか。

遡って Fメジャー・スケールからの流れで説明すると、I - IIm - IIIm - IV - V - VIm - VIIm( F - Gm - Am - Bb - C - Dm - Em )→ IIIm - IV - V - VIm - VIIm - I - IIm( IIIから並べる:Am - Bb - C - Dm - Em - F - Gm )という流れで(1)へと繋がる。 なおスケールを説明するに当たっては、ギリシャ数字はコードを、英数字は単音をそれぞれ表すものとする

※2.  フリジアン・メジャー・スケール(アラブ音階のマカームのヒジャーズ Hijaz とも同等)は、ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ・スケール、ユダヤ・スケール、スパニッシュ・ジプシー・スケール(長調)、フリジアン・ドミナント・スケール(長調)とも呼ばれている。本項目のみ「フリジアン・メジャー・スケール」と記述し、以降はポピュラー理論で多用される「ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ・スケール」に統一させていただく。

※3.  長調はアレグリアス、グアヒーラス、ガロティン等、短調はファルーカ、カンパニジェーロス等。



●フラメンコの調性

 フラメンコは以下の二種類の調性が軸になっている。

名称 内容 スケール アンダルシア終止形
ポル・メディオ
por medio
Aを基音にしたスケール A フリジアン
A スパニッシュ・8ノート
Dm → C → B♭ → A
(Key in Dm)
ポル・アリーバ
por arriba
Eを基音にしたスケール E フリジアン
E スパニッシュ・8ノート
Am → G → F → E
(Key in Am)

 ギター演奏的には、ポル・メディオは5弦開放A音ポル・アリーバは6弦開放E音からそれぞれ始まるスケールと考えた方が分かりやすい。
 カポタストを使用して調性を変える(ラモン・モントーヤがアントニオ・チャコンのカンテのトケで始めたらしい)ことで調性の名称は変化するが、難しく考えずに、カポタストのフレットを0フレットとして、ポル・メディオなのかポル・アリーバなのかと考える方がシンプルである(例:2カポのポル・メディオは、7カポのポル・アリーバと同じ調)。

 参考までに調性の変化による名称を以下に列記しておく。

名称 内容 スケール アンダルシア終止形
ポル・グラナイーナ
por granaina
Bを基音にしたスケール
(2カポのポル・メディオと同等)
B フリジアン
B スパニッシュ・8ノート
Em → D → C → B
(Key in Em)
ポル・レバンテ
por levante
(※)
F#を基音にしたスケール
(2カポのポル・アリーバと同等)
F# フリジアン
F# スパニッシュ・8ノート
Bm → A → G → F#
(Key in Bm)
ポル・ミネラ
por minera
G#を基音にしたスケール
(4カポのポル・アリーバと同等)
G# フリジアン
G# スパニッシュ・8ノート
C#m - B - A - G#
(Key in C#m)
ポル・ロンデーニャ
por rondena
C#を基音にしたスケール
(変則チューニングによる)
C# フリジアン
C# スパニッシュ・8ノート
F#m - E - D - C#
(Key in F#m)
※ ポル・タランタ por taranta とも言われる。



●スパニッシュ・8ノート・スケール

 前述したとおり、フラメンコで多用されるコード・スケールは、フリジアン・スケールを原型として発展したスパニッシュ・8ノート・スケールである。
 後章の「調性でなくモード(旋法)で考えるフラメンコという民俗音楽」で述べるように、厳密に言えば、フリジアン・スケールとスパニッシュ・8ノート・スケールは、ポピュラー音楽理論から見れば性格が異なるコード・スケールであるのだが、プーロなフラメンコでは深く考えずに、「フリジアン・スケールに M3 を付け足したスケール」とシンプルに考える方がよい。
 そもそもフラメンコを始めとするスペイン音楽で使われるフリジアン・スケールも、厳密にはポピュラー音楽理論のフリジアン・スケールとは解釈が異なる点があるので、スパニッシュ・フリジアン・スケールとでも言った方が良さそうでもあるが、混乱を生じかねないので従来の名称で通すことにする。

Por Medio
Por Arriba

スパニッシュ・8ノート・スケール
構成音 Tonic m2 m3 M3 P4 P5 m6 m7
テンション   ♭9 #9       ♭13  
por medio A A#(B♭) C C#(D♭) D E F G
por arriba E F G G#(A♭) A B C D

● アボイド・ノート、コード・トーンについては、フラメンコではさほど重要な要素ではないと思われるため、次回の応用編で説明したい。

【基礎編備考】
(1) dim5の使用:オルタード・テンションで統一されているという点では、理論的にオルタード・ドミナント・スケールとの共通性が見られるため、P5の代わりにdim5を使用する場合がある。(例:ポル・メディオでの4弦1フレット、2弦4フレットなど)
(2) M7の使用:シギリージャスなどで経過音以上の重要な音で使用される M7 は、スパニッシュ・8ノート・スケール外の音であるが、例えばポル・メディオのアンダルシア終止形( Dm → C → B♭→ A )においては B♭でフレーズが展開されていることから、B♭7( #11) の転回コードを分解したもの( T - M3 - P5 - m7 - #11 を転回 → m7 - T - #11/※ M3、P5はオミット)と考えられる。

ギター・コード譜参照:Bb_Tenkai



《補足》スパニッシュ・8ノート・スケールと音構成が似ているスケール

フリジアン・スケール
構成音 Tonic m2 m3 P4 P5 m6 m7
テンション   ♭9 #9 11   ♭13  
Key in A A A#(B♭) C D E F G
備考 スパニッシュ・8ノート・スケールから M3 を抜いたもの。

ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ・スケール
構成音 Tonic m2 M3 P4 P5 m6 m7
テンション   ♭9       ♭13  
Key in A A A#(B♭) C#(D♭) D E F G
備考 スパニッシュ・8ノート・スケールから m3 を抜いたもの。
アラブのマカームのヒジャーズ Hijaz と同じ。
別名称 フリジアン・メジャー・スケール、ユダヤ・スケール、スパニッシュ・ジプシー・スケール(長調)、フリジアン・ドミナント(長調)

ダブル・ハーモニック・スケール
構成音 Tonic m2 M3 P4 P5 m6 M7
テンション   ♭9       ♭13  
Key in A A A#(B♭) C#(D♭) D E F G#(A♭)
備考 スパニッシュ・8ノート・スケールから m3 を抜き、m7をM7に変えたもの。ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ・スケールのm7がM7になったもの。
アラブのマカームのシャナーズ Shahnaz と同じ。
別名称 アラビック・スケール

フリジアン・ドミナント・スケール(長調)
構成音 Tonic m2 M3 P4 P5 m6 m7
テンション   ♭9       ♭13  
Key in A A A#(B♭) C#(D♭) D E F G
備考 スパニッシュ・8ノート・スケールから m3 を抜いたもの。ハーモニック・マイナーP5th・ビロウ・スケールと同じ
別名称 スパニッシュ・ジプシー・スケール(長調)

フリジアン・ドミナント・スケール(短調)
構成音 Tonic m2 m3 P4 P5 m6 M7
テンション   ♭9 #9     ♭13  
Key in A A A#(B♭) C D E F G#(A♭)
備考 スパニッシュ・8ノート・スケールから M3 を抜き、m7をM7に変えたもの。フリジアン・スケールのm7がM7になったもの。
別名称 スパニッシュ・ジプシー・スケール(短調)




●調性でなくモード(旋法)で考えるフラメンコという民俗音楽

 フラメンコで使用されるスパニッシュ・8ノート・スケールや、その原型であるフリジアン・スケールは、長音階や3種の短音階による調性的な考え方 [tonality] を根拠とせずに、モードすなわち調性外の音組織に基づく考え方 [modal] を根拠とすることが重要である(※1)。
 例えばチャーチ・モードにおけるフリジアン・スケールのアボイド・ノートは m2、m6 であるが(m6 は特殊なケースとして使用は可能)、フラメンコで用いるトニック・コード [ T - m2 - M3 - P5 ] では、このアボイド・ノートの m2 が重要な特性音 Character Tone として使用されるところに、独特のモーダルな雰囲気が出てくるのである(※2)。
 このようにモードに基づく考え方をすることで、通常のコード・スケールのアボイド・ノートがメロディ・ノートとして、また時にはコード・サウンドとして活用されるため、モードでの使用音の制約はなく、スケール構成音のすべてが使用できるのである。その結果、長調、短調に基づく調性音楽の枠からの開放や、複雑なコード進行の細分化によるインプロビゼーションの制約からの解放など、より自由なアドリブを含むメロディ・ラインの展開が得られるようになっている(※3)。

【補足】フリジアン・モードについて
 マイナー・モードに分類されるフリジアン・モードはフリジアン・スケールを根拠としたモードで、短2度(m2)を特性音とし、短2度はメロディ・ラインでの下行導音としてトニックに結びつく。
 代表的な終止形は♭II → Im であるが、♭II - I のようなメジャー・コードへの終止を構成する場合もある(まさにフラメンコがこれに該当する)。
 ♭III →♭II → I のような一連の終止形でのすべての構成音をスケールとして配置すると、スパニッシュ・8ノート・スケールとなり(※4)、この種の終止形とスパニッシュ・モードとの関連性が伺われる。


※1.  巨匠マノロ・サンルーカルも、アンダルシア終止形を調性上( Im → bVII → bVI → V )ではなく、フリジアン・モードで構築する( IVm → bIII → bII → I )という考え方をしていた。基本的にフラメンコはモードに基づく考え方が重要なのだが、ポピュラー音楽の中にフラメンコ的な要素を入れるという場合においては、調性による考え方が必要になるため、各種コード・スケールの性格や用途の違いはしっかり把握しておく必要があろう。

※2.  ギター・コード譜参照:TAB_Tonic
理論上ではメジャーコードでは ♭9 のテンションは不可なので A(♭9) や E(♭9) とは呼べず、調性上のドミナント7thコードとして機能している A7(♭9) や E7(♭9) が、モード上で 7th を省略したトニック・コードに変化したとしか言えなさそうである。フラメンコのトニックは 7th ではないので、深く考えずに「こういう形なのだ」と受け入れるしかない。フラメンコのコードは他にも転回形や省略形が多く使われるが、理論的に考えずに「こういう形なのだ」と素直に受け入れる方が悩まずに済む。次章「フラメンコのギター・コードについて」も参考頂きたい。

※3.  フラメンコも民俗音楽である性格上、モードや調性の考え方だけでは説明出来ないことも色々ありそうである。
例えば、フリジアン・スケールは、チャーチ・モードのスケール(長調の IIIm7 )であり、スパニッシュ・8ノート・スケールはドミナント7th系のスケール(短調の V7 )という性格の違いがあるのだが、フラメンコにおいてはその相違を深く考えずに「フリジアン・スケールに M3 を付け足したスケール」と、シンプルな考え方でスパニッシュ・8ノート・スケールを捉えているようである。
また特性音(各モードをはっきりと識別させる音)において、フリジアン・スケールは m2、スパニッシュ・8ノート・スケールは m7(ドミナント7th系であることから推測)であるが、フラメンコにおいてはスパニッシュ・8ノート・スケールも m2 と考えた方が、フリジアン・スケールとの相関関係を見れば明らかである。
畢竟理論とは後から付いてくるものであり、民族が生み出す音楽は理論を超えた切実な感情から生まれるのである。

※4.  例えば E フリジアンの G → F → E というアンダルシア終止形において、各コードの構成音、Gコード( G - B - D )、Fコード( F - A - C )、Eコード( E - #G -B )の構成音をすべて列記すると、( E - F - G# - G - A - B - C - D )となり、E スパニッシュ・8ノート・スケールとなる。
   



●フラメンコのギター・コードについて

 フラメンコで使われるコードは、ポピュラー音楽では馴染みのない特殊な押さえ方をするものが多くあるのだが、アンダルシア終止形( IVm →♭III →♭II → I )(※1)のコード進行に照らし合わせてみると、対応する各コードの転回形(※2)を用いていることが分かる。必ずしも低音弦にルート音が入っている必要はなく、M3、P5、M6、m7 などの音が低音弦でも大胆に使用されていて、独特な響きを醸し出しているのである。

 各種パロ(ブレリア、タンゴ、ソレア、シギリージャスなど)の基本的なコード進行、およびギター・コードはわざわざ説明するまでもないと思うので、今回はパロを問わず頻繁に出てくる特徴的なギター・コードの一部を列記したい(ポル・メディオのみ)。なおラスゲアードの場合には6弦は省略可能である。
 これらのコード名称まで覚える必要はないと思うが、転回後の和音構成をチェックするだけでも、新しいコードを作るのに役立つであろう。フラメンコにもブルース的なフィーリングを感じるのは、7thコードが多用されていることからも伺い知ることが出来る。

Flamenco Guitar Chord

※1.  ポル・メディオ:Dm → C → Bb → A/ポル・アリーバ:Am → G → F → E。なお調性的な考え方から見れば Key in Dm/Am となり、実際のコード進行は自然的短音階(ナチュラル・マイナー・スケール)の Im → bVII → bVI → V となるのだが、ここではモード(旋法)で考えているため Key in E or A で捉えることにする。

モードにおけるアンダルシア終止形( IVm →♭III →♭II → I )の各コードの機能は( IV:サブドミナント・コード、♭III:メディアント(第3音)・コード、♭II :ナポリタン6th・コード、I:トニック )である。
♭II は V へ解決するナポリタン6th・コード(ナポリの六の和音)、すなわちトニックの短二度上(半音上)の音で構成される長和音であり、♭II(on IV) または IVm+5 とも表記される。例えばポル・メディオにおいては、トニック(A)の構成音(A - E - D♭)を半音上げた(B♭- F - D)となり、♭II (B♭)の構成和音と等しい。
このナポリタン6th・コードはサブドミナントの機能を持ち、特に短調において II の代理和音として使用されることが多く、さらに(1)根音の短七度上(m7)の音を追加した場合(♭II7)は、V7 と同じ M3と m7 のトライトーン(全三音)を持つため、ドミナントの機能を持つ V7 のトライトーン・サブスティテューション(裏コード)となり(同じ理由で VIIm7(♭5)、VIIdim も裏コードになるが、使用頻度は低い)、(2)根音の長七度上(M7)の音を追加した場合(♭IIM7)は、トニックやサブドミナント・マイナーの機能を持つ。上のコード一覧表の中では、B♭6 に ♭A音を足したB♭7(13) が(1)トライトーン・サブスティテューションの性格を持つことになるが、フラメンコでは当然そこまで難しく考えなくてもよい。
さらに上記の理論を展開させると、♭II7 と V7 の関係は、ドミナント終止への応用やサブドミナント〜ドミナント進行への応用というドミナント・モーションの発展型として使用されるのだが、横道に逸れてしまうので以上に留めておく。

※2.  ここで言うところの転回形とは、音楽理論で用いられる 第一転回形〜第四転回形 のように一定の法則の中で和音配列が決まっている転回ではなく、ギターのフレット上で表現可能なフォームとして確立されたものである。

※3.  C/D というポリコードとも言える(厳密に言えば Cコードは omit3 になる。Cコード: C - G、Dコード: D - A - F# )。表組のこれらのコード名称を覚えたところであまり意味はなく、アンダルシア終止形の進行の中で把握できれば良いし、色々な楽曲を練習していく中で自然に身についていくものである。

※4.  コード進行によっては C7sus4(onD) と考えた方がしっくりくる時がある(例えば D7add11 → Csus4(onD) → Bb7(13) → A )。T - P4 - P5 - m7 の転回形に I のルート音を載せたもの。

※5.  一見するとGm7 → Gm7 (on A♭) のようなルート音の半音進行に思えてしまうが、これもアンダルシア終止形に照らし合わせるとB♭のコードであり、M6 → m7 の半音進行となる。※1のナポリタン6th・コードのところでも触れたが、ポピュラー音楽理論的にはB♭7(13) はトライトーン・サブスティテューション(裏コード)の性格を持つ。

※6.  理論上は 7th のコードに #11th のテンションを乗せることは間違いではないのだが、P5(F)と♭5(E)が混在して不安定な響きになるため、通常はP5をオミットして使用する。まぁフラメンコの場合は、雰囲気でこのまま一弦開放まで鳴らしてしまっても良いのかもしれない。




次回は「フラメンコのコード・スケール理論【応用編】」です



CondeA26

 少し前にレスター・デヴォー(黒)を手放して、コンデ・エルマノス A26(白)のフェリーペ工房08年製を入手しました。

 行きつけのショップでデヴォーをメンテナンスに出した時に好みの音が出るA26に偶然出会ってしまい、何度もショップに通いデヴォーや他のコンデと弾き比べを重ねた末に決断しました。ここ最近スペイン的な泥臭いサウンドへと好みが向いてきたこともあり、良い個体に巡り会えれば買い替えてもいいと思っていた矢先のことだったので、出会うべくして出会ったのかもしれません。

 このA26はネック仕込み角度を指定した特別仕様です。コンデの通常仕様はこの角度が若干甘めに設定されているようで(長年のノウハウで培ったベストな角度があるのでしょう)、そのためにサドルが低めの設定になっており、弦高調製でサドルを削り過ぎると後で微調整がやり難くなるという危惧があります。ネック仕込み角度を指定することでサドルに高さが出て、弦高調製の不安から解消されるのです。
 またオリジナルのナットは溝の切り方が大味だったので、ショップで新たに加工して頂いたものを装着してみたところ、ブライトさと奥行き感が増してよりカラフルな音色に変わりました。さらに購入後一ヶ月後に再メンテに出し、ナットとサドルの微調整をしてもらって、三、四弦の鳴り具合がより改善されました。

 緻密な作りのデヴォーに比べると、A26は全体の作りの荒さやマシンヘッドの精度の甘さ(フステロのフレタタイプ装着。デザインは上品で好みだがギアの精度が甘い)、さらに付属ケースの安っぽさが気になるものの、まさにコンデにしか出せない魅力的なサウンドを持っているように思います。自分は深みのあるネグラの音が好みだと思っていたのですが、このブランカの音に出会ってそんなこだわりは捨てました。立ち上がりも減衰も速くて、後味すっきりのムイ・フラメンカな音色です。新品でまだ若い音色なので、これから経年でどんな音に変化していくのか楽しみです。

 で、今回は弦選びの話。この一ヶ月半いろいろ試してみたのですが、今のところコンデ弦とサバレス ピンクラベルが好みです。ちなみによく弾くパロはブレリアとタンゴで、情熱的で力が漲(みなぎ)っている表現が好みです。



【本記事の弦評価について】
※ 評価については、★(黒星)五個が満点となります。(灰星)は〇・五点です。
※ 評価はあくまで自分のギターとの相性であり、弦自体の品質や優劣を評価したものではございません。
※ 主観的な感性に基づく感想のため、評価が必ずしも第三者に取って有効であるとは限りません。本記事によって第三者が損害や不利益を被った場合でも、当方は一切の責任を負わないことをご了承願います。



Strings01_conde●コンデ・エルマノス 730(ミディアムテンション)
 ★★★★★(五点満点)

 セット弦。バランスよくまとまっていて安心して使える弦。明るく乾いた爽快感のある音色。バランス感が絶妙で弾いていて心地よい。値段がちょっと高く、低音弦もバラ買い出来ないため頻繁に使えないのが残念ですが、これが一番のお気に入り弦。


Strings02_savarez●サバレス ピンクラベル
 ★★★★(四・五点)

 セット弦。張り替えた直後はコンデ弦に比べると地味な音色だったのですが、翌日から急激に鳴り始めました。テンションが緩めなのに音量も大きく、低音も高音もバランスが取れていて、特にラスゲアードの音がムイ・フラメンカで、他の弦にでは出せないリッチな質感を持っています。三弦のちょっと擦れた感じの切ない音も好み。モライートっぽい音(本人がこの弦を使用しているかは不明)。耳にも指にも心地良く、こういう音が欲しかったんだよなぁと納得させられた弦です。低音弦、特に四弦の寿命が短いのは残念。



Strings03_luthier01●ルシエール#35(銀)
 ★★★★☆(四点)

 デヴォーの時から愛用していたセット弦。コンデやサバレス ピンクラベルとは対照的な落ち着いた音色なのですが、奥行きと芯のある低音弦の深い響きが癖になります。音量がちょっと物足りなく、テンションもやや強いため常時使用はしていないのですが、たまに思い出した時に使うと妙に和んでしまう癒し系の弦。今回試した中では一番寿命が長かった弦でもあり、コストパフォーマンス的にも優れています。



Strings03_luthier02●ルシエール#20(赤)
 ★★★☆(三・五点)

 フラメンコギターを始めてから一番多く使用したセット弦。メンテ前のデヴォーではキンキンしてちょっと下品かなとも感じていましたが(メンテ後に試したなら印象が変わったかも)、コンデA26ではキンキンさが和らいで良い塩梅になりました。
 乾いたブライトな音色で性格がコンデ弦に似ているのですが、低音弦はどうも平面的で拡がりがなく、ギター周辺だけでチマチマと鳴っている感じで、音が前面にガツーンと飛び出るという気持ち良さが感じられません。低音弦の寿命も結構短い。一方、高音弦(#35と同等)はコンデ弦よりも艶っぽい音がして良い感じ。全体的には一長一短の弦。パコ・デ・ルシアやトマティートの推奨弦でもあるので、メンテナンス次第で良い音が出るのでしょうか。この弦の持つ透明感や艶っぽさは捨てがたいものがあるので、今後の課題としたいところ。
(【2009.11.4追記】トマティートのようなアグレッシヴなブレリアを弾いていると高音側の鳴りが心地よく感じられます。「高音側#20、低音側サバレスピンク」という組み合わせも最近気に入ってます。)



Strings04_hannabach●ハナバッハ フラメンコ(ミディアムテンション)
 ★★☆☆☆(二点)

 セット弦。高音弦がオレンジ色なのが特徴。この弦はヤマハのフラメンコギターにも採用されているようで、チューニングが合わせやすく音程もしっかりしている優等生的な弦。しかし高音弦は音量も透明感も全く足りなく、低音弦は広がりがなく平面的な音。全体的に音に力がなく、廉価なギターを弾いているような垢抜けなく冴えない感じで、物足りなさが残りました。



Strings05_augastine●オーガスチン(赤)
 ★★★☆☆(三点)

 低音弦のみ。太い音で音量も結構あるのに、なぜか弾いていても面白味が湧かない弦。個性がないのかなぁ。ラスゲアードの音が薄くて物足りない。全体的にもう少し粘りが欲しいです。四弦の寿命が早く三日でヘタりました(日に六時間の練習の場合)。



Strings06_inperials●オーガスチン インペリアル
 ★★★☆☆(三点)

 高音弦のみ。テンションがキツめで音も硬い。透明感と艶がある音色なのでクラシック系の繊細な音を出す人には評判が良いようですが、激しくかき鳴らす演奏が好きな自分にはダメでした。好みが別れる弦でしょうか。ブリッジ側の結ぶところだけ黒くなっているのが特徴。




Strings07_t2●プロアルテ チタニウム ノーマルテンション(D'Addario T2 Titanium)
 ★★★☆☆(三点)

 高音弦のみ。チタン弦。パッケージには "D'Addario T2 Titanium" と表記されているものの、なぜか国内では "プロアルテ" の名前で流通しています。うっすらと紫色を帯びている綺麗な弦。暗いステージだと見え難くなるかも。透明感や艶はあるけど音質は硬め。オーガスチン インペリアルと性格が良く似ていて、フラメンコよりはクラシック系の表現に向いている弦のように思いました。



Strings08_hanabach●ハナバッハシルバー200(ミディアムローテンション)
 ★★☆☆(二・五点)

 高音弦のみ。ルシエールの高音弦に比べると透明度が渋く少し硬い。何か足りない感が残ります。定評のある弦のようですが、自分の好みとはちょっと違いました。



Strings09_alliance●サバレス アリアンス スタンダード(3弦)
 ★★★☆☆(三点)

 三弦のみ。フロロカーボン弦。サバレス ピンクラベルのセット弦に三弦だけこのアリアンスを張ってみました。とにかく細く、サバレス ピンクの二弦と同等かそれよりも細く見えたほど。音量もあり、たしかにクリアで歯切れがよい音が出るものの、ピンクラベルの三弦のようなちょっと擦れた切ない感じのニュアンスが減ってしまったので、結局馴染めませんでした。



A Life from Elevator da Bica

 ホームページ特別企画、SPECIAL MOVIE 第七弾を公開しました。今回は小作品『A Life from Elevator da Bica:ビッカ線から眺める生活』です。前回同様ロード・ムービー「One Step Beyond」(05年) 第九章 ポルトガル編 からの抜粋。

 坂の多いリスボンではケーブルカーが生活の脚として活躍しています。三系統ある路線の中では、特にビッカ線から眺める市井の生活風景に引きつけられました。混雑する狭いケーブルカー車内での撮影は難航を極め、構図がずれたりシャッター速度の設定に不備があったりと、素材としては上手く録れなかったセッションでしたが、今となっても特に印象に残っている光景です。

 旅先で印象的なショットが撮れた時は、自分があたかもロビー・ミューラーやアンリ・カルティエ=ブレッソンに近づけたかのような気分に浸れました。撮影者としての自分の存在感をいかに消して被写体と同化するかが、旅を切りとる上で大切な事だと思います。本当に良い映像や写真は言葉や文字による説明を必要とせず、その存在自体に説得力を宿していると思うのです。

 
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『A Life from Elevator da Bica:ビッカ線から眺める生活』
※ 映像作品「One Step Beyond」(2005年)より
映像と音楽:こいで みのる
制作:2005年
再生時間:1分31秒
映像:カラー
音声:ステレオ
アスペクト比:4:3
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