
ロマ・ミュージックと言えば、久々の新譜「仮面舞踏会」をリリースしたルーマニアのタラフ・ドゥ・ハイドゥークス、ピーター・ガブリエルが主催するReal World Recordsレーベルに参加しているエジプトのザ・ミュージシャンズ・オブ・ザ・ナイル、マケドニアはスコピエ出身のジプシーの女王エスマ・レジェポーヴァ、今夏にも来日したインドのラジャスタンの芸能集団ムサフィール、カンテ・フラメンコ界で最も重要なスペイン南部カディス出身のカマロン・デ・ラ・イスラ、そして南フランスから世界区となったジプシー・キングスなど、有名どころを挙げるだけでも色々出てくるのですが、最近好んでよく聴いているチェコの巨漢シンガー、ヴィエラ・ビラを紹介します。
ヴィエラ・ビラは1950年代半ばに、チェコのボヘミア地方トキチャニで生まれた生粋のロマです。名前の「ビラ」は白を、バンド名の「カリ」は黒を意味し、黒はロムの肌を、白はガジョ(非ロム)を暗喩する色とされています。ロマ音楽などラジオやテレビの電波に一切乗らないチェコ国内で、1995年発表のデビューアルバム「Roma Pop」は三千枚のセールスを記録しました。無名のロマ・ミュージシャンのセールスとしては驚くべき数字です。そもそもの発端はチェコの人気バンド、ネレーズの女性ヴォーカリスト、スザーナ・ナヴァロヴァがツアー中にヴィエラの噂を聞き、ロマの宴会で演奏する彼女たちの姿を見て以来交流を深め、ネレーズがプロデューサーとなって「Roma Pop」をリリースしたという経緯があったのです。そしてその後フランスのロック系のインディペンデント・レーベルであるラスト・コールが彼女たちのデビューアルバムをリリースするや否や、フランスではチェコ本国以上に大ブレイクし、日本でも二枚のアルバムがリリースされるほど有名になりました。
ヴィエラは7歳から村の祝祭で歌っていて、その音楽スタイルはロマの純粋な伝承音楽のひとつ、ツィンバロ・ムジカ(ギター、バイオリン、ツィンバルムを使用)でした。このジャンルのバイオリンの名手と呼ばれたカロル・ギーニャが、幼い彼女の音楽の師となったのですが、他の音楽的影響を受けずにストイックに伝統音楽の教育を目論んでいたカロルの考えとは裏腹に、ヴィエラはビートルズ、ビーチ・ボーイズ、ビージーズなどの西側の音楽により深く傾倒していき、師匠を大いに困らせたようでした。
デビューアルバム「Roma Pop」では、そんな彼女が培ったポップ感覚が十二分に発揮されており、西側ポップ音楽の流用(たとえばビートルズ「ビコーズ」、レッド・ツェッペリン「天国への階段」など)が至るところに見受けられて面白いです。アルバムを通してツィンバロ・ムジカの要素はあまり盛り込まれておらず、南フランスのカマルグ地方で聴かれるルンバ(交流のある南フランス出身のジプシー・キングスの影響?)やブラジルのボサノヴァの要素が特に強く印象に残ります。
楽理的には非常にシンプルなのですが、巨漢ヴィエラの太く柔らかい声や、多彩なヴォイシング、どことなく懐かしくて親しみ易いメロディーに包まれていると、まるで母親の子宮の中にいるかのような、浮遊した心地よさすら感じます。そして面白いのはロマの私生活や感情を感じさせる歌詞。たとえば名曲「Miro ROM Hin Ternoro」はラブソングを彷彿させるような切ないメロディですが、実際には『私の夫は若すぎて/いつも他の女たちの尻ばかり追いかけている/お母さんが言った通りだった/あの男と一緒では生活がめちゃくちゃだ』と、奥さんが愚痴をこぼすような内容で面白い(この楽曲は世界のジプシー音楽を集めたコンピレーション盤「
World Gypsies Vol.2」のライブ音源が秀逸なので、機会があれば是非とも聴いてみてください)。
他にも「おまえ、よそ者」「稼ぎが悪い」「腹を立てるな」など、生活感漂う曲名にもグッときます。ロマの生活をポップ音楽に昇華したという意味において、ガジョ(非ロム)に一歩すり寄っている印象すら覚えます。すでに世界区になったジプシー・キングスの名を挙げるまでもなく、
ロマが抱えている様々な問題を解決する糸口として「音楽」は重要な要素であることは疑いようがありません。 分厚いハーモニーに絡むヴィエラの哀愁を帯びたメロディ。悲しみや死をテーマにした重い歌が多いのに、聴き終えた後はなぜか気持ちが軽やかになって、世界がオプティミスティックな拡がりを見せるのはなんとも不思議です。
デビューアルバム「Roma Pop」は現在廃盤ですが、98年発売の2ndアルバム「Kale Kalore(情熱のカリ)」と共に、インターネットの世界音楽サイト calabashmusic.com でMP3データの試聴とダウンロード販売が可能です(米国発信の本サイトはストリート系世界音楽、中でもアフリカ諸国の音源が豊富です)。日本でのデビューアルバムは「Rovana(泣きたい気持ち)」ですが、全体的にバラード調の曲が多く、ヴィエラの個性が充分に表現されていないように思います。それ以外に2枚の輸入盤「Queen of Romany」「C'est Comme Ca」が入手可能ですが、残念ながらまだ未聴です。
どのアルバムのジャケットデザイン・コンセプトも彼女の巨漢と花がテーマになっており、非常にインパクトがあるのですが、彼女自身がそのミスマッチ感を楽しんでいるのが伝わってきます。YouTubeでプロモ映像を三本見つけたので、併せて是非ご覧ください。チェコのロマの生活が垣間見られます。
●Vera Bila MP3試聴&購入サイト:
Calabash Music, Vera Bila Downloads●Vera Bila YouTube プロモ映像1:
Music Clip "Dzal Pani"(邦題「町に水が流れる」)
●Vera Bila YouTube プロモ映像2:
Music Clip "Ma Dza Nikhaj"(邦題「水」)
●Vera Bila YouTube プロモ映像3:
Music Clip "E Daj Nasval'i"(邦題「お母さん、あなたなしでは・・・」)
2007/10/28
世界の路傍音楽
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三年前、朱夏のアンダルシア訪問でグラナダに滞在していた時の出来事。カルメン広場の路地裏の安ホテルで寛いでいた白い夏の午後、向かいの家屋からいきなり大音量で流れてきた音楽に電流を浴びたような衝撃を受けました。ロックを彷彿とさせるフラメンコ風の楽曲。激しいビートに畳み掛けるようなメロディと力強く哀愁を帯びた歌声。まるでザ・フーの "Real Me" を初めて聴いて衝撃を受けた若い頃のような、体の底から熱いモノが湧き上がるようなリアリティを感じたのです。一瞬にして周りの風景が原色味を帯び、さらにハイキーで濃密なコントラストに変化する。スペインと自分が密接に繋がった瞬間でした。
後になってこの衝撃的な楽曲が、カンテ・フラメンコ界で最も重要なカディス出身のシンガー、カマロン・デ・ラ・イスラの「La leyenda del tiempo(時の伝説)」というアルバムのタイトル曲だと知ったのですが、今でもこの曲を聴くと、グラナダのホテルのベランダから観た風景や街中の香しい匂い、さらにはアルバイシンのひんやりとした石畳や夜のアルハンブラ宮殿の赤い城の光景がふっと蘇ってきます。およそ純粋なフラメンコとは言い難い、ロック的アプローチを持ったプログレッシブなこの楽曲こそが、ぼくの魂を揺さぶった強烈なフラメンコ原体験なのでした。
カマロンのアルバムでは、他に「Camaron Nuestro」「Como el agua」 「Calle Real(個人的にはこれが一番好き)」「Soy gitano」「Potro de Rabia y Miel」などを愛聴していますが、前述した1979年発表の「La leyenda del tiempo」は本当に凄いとしか言いようがない。パコ・デ・ルシアの代わりに二十歳のトマティートをギター伴奏に初めて起用したアルバムであり、ライムンド・アマドールもロック・フィーリング溢れるギターで参加。作曲にキコ・ベネノを迎えたり、詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカを偲んで5曲に彼の詩を引用しています。
タイトル曲 "La leyenda del tiempo" はスピーディーなブレリアやタランタのリズムで構成されている重要な楽曲で、さらに最終曲 "Nana del caballo grande" では、シタールのドローンを中心としたインド音楽的なアプローチとフラメンコを融合、ロマの原点と終点を結ぶという大胆なアレンジに挑戦していて、おもわず唸ってしまうほど。ローリング・ストーンズのミック・ジャガーも尊敬して止まないこのカンテオール。肺ガンのため92年に41歳の若さで逝去したのが本当に悔やまれます。
カマロンのアルバムは何枚かリマスター盤が発売になっているようなので、スペインに行く機会があったら是非ともまとめ買いしたいですね。
最近ほとんどのCDを処分してしまい、楽曲はもっぱらインターネットのダウンロード販売サイトから購入することが多いのですが、Apple社のiTune Music Storeでは手に入らない音源が多いため、最近は専らロシアの格安MP3ダウンロード販売サイトを利用しています。その中でも
mp3fiesta.com はフラメンコ系の音楽が充実しているので特に重宝しています。
アルバム1枚分ダウンロードしても大半が1ドル未満。ビットレートも128kbps以上なので、通常のオーディオシステムでの再生なら、マニアでない限り不満はないと思います(厳密にいえば、データ圧縮すると人間の不可聴周波数領域がカットされ音のニュアンスが変わるので、CD音源と比較すると音質は変化します)。現在ぼくはオーディオシステムを処分してしまい、iPodを音楽制作用のモニタースピーカーに繋いで聴いているのですが、この環境で特に不満はありません。しかし極めてたまにポップノイズやヒスノイズが目立つ楽曲(「Camaron Nuestro」は酷かった)もあり、このロシアのサイトの音源の出所に不審な点はあります。でも最近の音源なら問題ないと思いますよ。
レジスター後、20ドル〜100ドルの金額をクレジットカード決済でデポジットして、その後自分の好きな楽曲をダウンロードし放題。iTune Music Storeのようにダウンロードしたデータにジャケット画像も付いていないし、ダウンロードも手動なので面倒なのですが、とにかく安いのであまり文句も言えない。#LS-3M-P-06-94というロシアのライセンスを取得して営業しているようなので、違法性はないように思われます。ロシアには他にも
Legalsounds.com、
Mp3sale.ruなどの格安MP3ダウンロード販売サイトがあります。
●
mp3fiesta.com - MP3試聴&購入ページ:
La Leyenda Del Tiempo
2007/10/22
世界の路傍音楽
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生活を極めてシンプルにするために、現在片っ端から所持品を処分している最中なのですが、とうとう愛車までも手放すことにしました。車種はアルファロメオ・スパイダー・ベローチェ(91年式AT)です。個人売買を希望します。
結構手を入れてきたので、それなりに状態は良いです。この時代のオープンカーはフロントウィンドウが立っていて視界が広いし、三角窓から入る風は最高に心地良くて、今の車には味わえない優雅さが残っています。独特なアルファサウンド、そしてこの色気のあるトルソー。ヨットでクルージングしているかのような贅沢な乗り心地。まさにイタリアの醍醐味が味わえます。
もはや旧車の部類に入る車ですので、現在の車のようにメンテフリーという訳にはいかず、それなりに手がかかるのはやむを得ないですが、それを含めて楽しんで乗っていただける方にお譲りできればと思っております。値段はかなり抑えて提示しました。涼しい時期にオープンにして走ると滅茶苦茶気持ち良いですよ。今となってもホントに美しい車だと改めて実感しました。別れても好きな人・・・。
【10/16追記】
売買成立しました。ありがとうございました。
2007/10/07
雑記
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