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Raj_016

 ガディサール湖畔の木陰でしばらく寝転がっていると、どこからともなく弓奏楽器カマイーチャ Kamayacha の柔らかな音色が聞こえてきた。カマイーチャと言えば、前回もカラカール・コロニーで暮らすマンガニヤールのディーヌ・カーン Dinu Khan のセッションが記憶に新しい。ハルモニウムが伴奏楽器としての役割を担うようになってきてからは、カマイーチャは年々継承者が減ってきて、今では演奏するのは高齢者だけという稀少な楽器となってしまっている(過去映像作品:manganiyar, rajasthan folk - vol.1(YouTube)をご参照)。丸い胴体はマンゴの木、ヘッドは象牙、弓は馬の尻尾、メロディを奏でる三本の太弦は山羊の腸弦、十数本の共鳴弦は金属弦を使用している(さらなるカマイーチャの詳細については、本ブログの過去記事「私説ロマ:マンガニヤールの使用楽器」をご参照いただきたい)。
 ディーヌのカマイーチャは壊れていたため、かなりアバンギャルドな音を出していたが、この湖畔から聞こえている音色はなかなか美しく、うっとりと聞き惚れてしまう。モンゴルの馬頭琴が「草原のチェロ」と形容されるなら、このカマイーチャはさしずめ「砂漠のチェロ」と言っても過言ではないだろう。

 この砂漠のミッシャ・マイスキーは、バスー・カーン Basu Khan と名乗る、ジャイサルメールの北西のサンセットポイント近くのブッダ・コロニーに暮らしている老人である。今回は通訳もいないので現地語しか解さない彼とコミュニケーションをするのは少し難儀だったが、こちらの撮影機材を一瞥(いちべつ)して目的を察してくれたようだ。
 リベラルな小鳥の鳴き声に包まれながら、早速ジャイサルメールの楽士なら誰でも演奏できる有名な民謡「ゴールバンド」 を演奏してもらう。カマイーチャの太く優しい音色が、目覚めの一杯のマサラ・チャイのように爽やかに朝の湖面に反響している。ストリートが糞尿のカオスから開放された瞬間。そして歌が始まってさらに惹きつけられた。老人とは思えぬほど張りのある爽やかな美声で朗々と歌い上げるではないか。老人と小鳥の爽快なコラボレーション。ときおり自由になった左手を左右に振って感情表現するのもコミカルで楽しい。インド古典舞踊でも見られるように、手の所作で感情表現することはまさにインドの芸能や芸術表現にはなくてはならないものである。
 二十分ほどのセッションが終ったころに、白人の団体客が湖に訪れてきた。バスーはここぞチャンスとばかりに、これも老人とは思えない機敏な素早い動きで、彼らが集っている湖上の祠(ほこら)へとすぐさま移動。その臨機応変な変わり身の速さが可笑しい。

 さて今日も彼はたくさん儲けただろうか。


(写真:バスー・カーンと彼の名前を胴体に記した弓奏楽器カマイーチャ)

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BASU KHAN (at Gadisar Tank in Jaisalmer, 08.Mar.16)
01. Gorbandth
02. Moomal
03. Nimbla
※赤文字が今回DVD作品化


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