上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

raj_021

 日を改めて、もう一度ジャグディッシュに会うことにした。約束の時間に彼の家に行くと、彼の奥さんが笑顔で出迎えてくれた。
 ボーパが絵解きをする時には女役のボーピーとペアで演じられるのだが、夫がボーパで妻がボーピーの役を演じることが多い。ジャグディッシュの奥さんも絵解きをする時はボーピーを演じるとのこと。だが母と息子である場合や、女性の芸能を禁止しているビール族 Bhil では男同士(片側が女形)の場合もあるそうだ。
 クールでロック的なオーラを放つジャグディッシュが絵解きをする光景がどうにも想像できないのだが、頼まれる頻度は割と多いと語っていた。だが彼は絵解きや観光客への演奏収入だけでは食べていけないようで、農業作業や土木作業にも従事しているそうだ。午前中はフォートの入り口の広場で手製の土産用のミニチュアのラーヴァンハッターを売っているので、彼に会ってみたい人は是非訪れてみて欲しい。自らの演奏用のラーヴァンハッターも自作であることから、土産用のミニチュアも品質は信頼できるもののように思えた。二〇〇八年三月当時で五〇〇ルピー。できることなら私も買って帰りたかったが、荷物の都合上ここまで大きなものを持ち運ぶ余裕がなく結局諦めてしまったのだが、帰国後の今となって相当悔やんでいる。

 前回のセッションで、ジャグディッシュの末っ子の息子にあげた日本のキャンディがかなり好評だったようで、夫妻も前回以上に好意的に接してくれる。奥さんはシルバー(アルミかも?)のアンクレットをプレゼントしてくれた。今まで旅をして来て、このように現地人、しかも楽士からプレゼントを貰ったことは初めてで嬉しさが込み上げる。「彼女にあげてね」と奥さんに言われたが、あいにく伴侶を持たない人生である。だが心に残る想い出の一品である。


Raj_021b

 今回の再訪の目的は、前回のセッションでジャグディッシュの煙草を吸う所作がクールで印象的だったことから、改めて撮影させてもらいたいと思ったのだ。御用達のビディ(インドの煙草)のノーマルとストロングの二種を差し入れに持っていくと、彼はノーマルの方が好きだと言う。煙草を袋から出してクールに吸うといったシーンを撮りたかったのだが、いざ撮影を始めると、ジャグディッシュはカメラを意識しすぎてコチコチになってしまう。むろん演技とは無縁のアーティストなのだから、演じることにそもそも無理があるのは分かっているのだが、どうしてもカメラに目線が向いてしまい自然な表情が撮れない。結局彼のクールな印象とは全く違った居心地の悪そうな散漫な煙草のシーンになってしまったが、普段とは違う彼の表情も興味深いので映像作品には入れることにした。

 撮影が終わって雑談をする。彼のベッドサイドには、シヴァ神、ガネーシャ神、サラスヴァティー神のポスターが貼ってある。ボーパもヒンドゥー教を信仰しているのだ。

 「あなたにとって一番重要な神は?」と尋ねてみる。
 「全部大事さ。でも一番は・・・『ラー』!」と天を指さして彼が言う。

 ラーといえばエジプト神話の太陽神が思い浮かぶ。だが彼に確認してみると「違う」という。彼の奥さんも一緒になって天を指して「ラー」と言っている。エジプトの太陽神でないのならいったい何なのだろうか。
 インドにラーと呼ばれる神はいるのか、後でコーディネーターのカマルに尋ねてみるが、分からないと言う。「アッラーのことじゃないのか」とも言われた(アッラーは、アラビア語で「唯一 (アル)」なる「神 (ラーフ)」を意味する)が、ヒンドゥー教を信仰している人が、はたしてイスラムの神を信じることなんてあるのだろうか。自然神であるエジプトの太陽神の方が、空を指さした彼の所作を踏まえても納得がいくのだが、真相は分からないままだ。とにかくヒンドゥー教の神への帰依はもとより、太陽崇拝、自然との一体感を感じながら生きている砂漠の表現者の思想を垣間見たようだ。(次回に続く)


(写真上:ジャグディッシュ夫妻と末っ子。日本のキャンディのウケがよかった)
(写真下:ビディに火を点けるクールなジャグディッシュ。映像作品『ザ・ラジャスタン~砂漠の表現者たち』より)


| HOME |


Design by mi104c.
Copyright © 2017 spruce & bamboo. All rights reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。