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Raj_022

 煙草シーンの撮影の後に、家の庭でこれからライブを開催するので観ていかないかとジャグディッシュから誘いを受ける。楽しそうだ。もちろん観たい。
 やがて十名くらいの韓国人の観光客集団がやってきた。先日ジャグディッシュがヒルトップで演奏している時に知り合った集団だそうで、彼らのためにライブを開催するのだという。韓国人を前にして演奏することが多いそうだ。私は最前列の右側に陣取る。今回のライブは、弓奏楽器ラーヴァンハッターと打楽器ドーラクの二人のコンビネーションによる演奏なので、舞台真正面の単調な構図ではなく、斜め向きの構図で撮ってみることにした。ガンマイクでのモノラル録音を後で少し後悔したが、あの状況ではステレオコンデンサーはちょっと難しかったかもしれない。定位が上手く決まらずに不安定な音になったかもしれない。

 日没直前にライブはスタートする。ジャグディッシュの傍らで末っ子の息子が、マスカットを頬張りながらリズムに乗って体を揺らしているのが微笑ましい。彼が父親の技術や精神を受け継いでいくのもそう遠い日ではないだろう。尊敬すべき父親像が、まだこのコミュニティでは生きているように思えた。このライブの後半では年長の息子が歌で参加して、観光客のフラッシュ攻撃にピースサインで答えるという余裕すら見せていた。
 薄暗くなってきた景色の中で、弓奏楽器ラーヴァンハッターの優しい音色に両面太鼓ドーラクのメリハリの利いたリズムが絡んで、扇動的でありながらも情緒的でもあるなんとも言えない多彩なサウンドが夕暮れのコロニーを包み込んでいる。演奏中に「楽しいかい?」と何度も私に訊いてくるジャグディッシュの表情は、子どものような無邪気な満面の笑顔に溢れていた。甘くメロディアスなフレーズはどことなく韓国民謡のアリランを彷彿とさせ、彼が韓国人にウケが良いというのも分かるような気がする。彼らの演奏は土着的な民族音楽の領域を越えている。演奏するのが楽しくて仕方がないという純粋さと、民族音楽をさらにクリエイティブに表現したいという切実さが伝わってきた。ここは本当にインドなのだろうか?いったい私は世界の何処で音楽を聴いているのだろう・・・。そんな無国籍で不思議な気持ちで、彼らのライブを楽しんでいた。


Raj_022b

 やがて日は沈み、照明もないこのステージでは撮影が困難なほど暗くなってしまったが、音だけでも録っておきたいのでカメラは回しっぱなしにしておく。途中でパペットショー(人形劇)を挟み、小一時間でライブは終了した。とても良いライヴだった。観客の韓国人たちが礼も言わず、チップも渡すことなくその場を淡々と去っていく無礼さには驚かされたが、ジャグディッシュはそんな状況を別段気にすることもなく、普段の様子と全く変わらない。彼の金に対する無頓着さや無欲さも、他の楽士たちには見られないものだった。

 街中にだって「ホンモノ」はいるのではないかなぁ。そう思わずにはいられなかった。


(写真上:自宅の庭でのライブステージでのひととき。年長の息子はステージでも余裕の表情ですでに場慣れしている)
(写真下:パペットショーもボーパのライブには不可欠な出し物だ。スカートを翻すと別の顔が出てくる。表現こそは違えど、人形浄瑠璃の「がぶ」を思い出させる)

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JAGDISH BHOPA (Live at Kalakar Colony in Jaisalmer, 08.Mar.19)
01. Chidiya Chug Gayi Khet - Lera (Medley)
02. Morchang
03. (Unknown Song)
04. Biro Banjaro Re [with his elder son]
05. Puppet Show
※赤文字が今回DVD作品化



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