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Raj_026

 ジャイサルメールを離れジョードプルに向かった。当初の予定ではバールメールを経由して、さらにマンガニヤールとボーパを撮影したり小さな集落を訪れてみたいと思っていたのだが、ジャイサルメールで出会った楽士たちだけで充分に映像素材が撮れたので、予定を急遽変更し、ランガとカルベリアの本拠地であるジョードプルに直行することにした。さらに時間が取れればウダイプールやグジャラート州の方まで足を延ばしてみたいとも考えていた。
 ジョードプルへはバスで移動。運賃は鉄道の2Aクラスの四分の一、百五十ルピー程度と安く、鉄道よりも一時間早く五時間で現地に着く。さらに鉄道では午後十時ころの遅い到着のため、昼間に現地に到着できるという利点からもバスを選んだ。

 滞在を決めた旧市街のゲストハウスで、今回の旅の目的を説明しガイドの斡旋を頼んでみると、初老の物腰柔らかなオーナーのアルーン爺の長男ニッキールが二つ返事で受けてくれることになった。ニッキールは現地の楽士についてはさほど詳しくはなかったが、人脈の広さとその穏やかな人間性により、安心してガイドを任せられる優秀な逸材であった。彼らの誠実そうな人柄に惹かれるところがあり、当初予定していた新市街での滞在を取りやめ、前回同様に喧噪溢れる旧市街に宿を構えることにした。

 チェックインした日はホーリーの前日だった。ストリートのあちこちでは、若い男たちが円形の大きな片面太鼓ダフ Daf を夕方ごろから威勢の良いリズムで叩き出し、すでに結構な賑わいを見せている。さらにホーリー当日のストリートでは昼過ぎまで色水や色粉を投げ合ったりするので、とても撮影どころではなくなる。さらに子どもたちは待ちきれずに前日から色水を掛け合っており、私もちょっとした外出時にいたずらで水を掛けられてしまった。この時期は旅疲れを取り除くためにも部屋で静養して、ホーリー明けから本格的に動き出そうという心づもりでいた。そういえば前回の滞在でも、ホーリー当日は酷い下痢で寝込んでいた。

 夜の十時頃になるとゲストハウスの階下が妙に騒がしくなってきた。打楽器ドーラクを打ち鳴らし、普段はストイックな生活を送っているが、今夜ばかりは無礼講と酒でベロベロに酔っぱらった男たちが大勢で楽しげに大合唱している。ゲストハウスのオーナーのアルーン爺を中心とした平民カースト(ヴァイシャ)のホーリーを祝う前夜祭の集いである。訊けばファルグン Falgun という春の訪れを祝う楽曲で、軍人が歌う軍歌のようなものだという。昼間は物腰柔らかで紳士的だったアルーンも、この時ばかりは酒の勢いに任せて大いにハメを外していたのが可笑しかった。同じ宿に滞在していたスロヴェニアの白人カップルたちとこのリベラルな光景をしばらく眺めていた。
 このような賑やかな集いは滞在中に何度か遭遇し、今回のようにドーラクのシンプルなリズムに合わせて皆で合唱するものばかりだった。彼らは毎月何らかの祭で盛り上がっているように思える。祭こそが「生」を感じる最高の表現なのだと言わんばかりに。


(写真:ファルグンを歌い祭を祝う平民カーストの人たち。中央で手を挙げているのがゲストハウスのオーナーのアルーン爺。映像作品『ザ・ラジャスタン~砂漠の表現者たち』より)


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