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The-Heart-of-Hindu09

 マハリシ・マヘシュ・ヨギ(一九一四~二〇〇八)Maharishi Mahesh Yogi は、超越瞑想(Transcendental Meditation = TM)で世界中で高い名声を得て、ビートルズの精神面にも影響を及ぼした聖者である。ビートルズが彼のアシュラムに滞在していた時に、高額な布施の強要や、同伴した女性信者に手を出そうとしたなどの諍いの話が今でも語り継がれているが、真偽の程は定かではない。ビーチ・ボーイズのマイク・ラヴやドノヴァン、ミック・ジャガーなども彼のアシュラムに滞在したようで、六〇年後半から七〇前半代にかけてのサブカルチャー・シーンでは特に影響力があったようだ。

 リシケシュのラムジュラから南に歩くこと二十分でアシュラムの入口にたどり着いた。横柄な政府役人から撮影機材持参だからと難癖を付けられ、通常の二倍の百ルピーを巻き上げられ(放浪民によるガイド同伴の場合は通常五十ルピー。またリシケシュ在住の白人がアシュラムのツアーを開催しているようだ)、ゆるやかな坂道をしばらく登ると堅牢な鉄製の門にたどり着いた。アシュラムはすでに雑草が生い茂った廃墟と化していて、さらに早朝の訪問ということもあって誰にも出会わず、薄気味悪さは倍増。ビートルズ関連の映像で馴染みの深い、六〇年代の清潔でリベラルなアシュラムの名残は微塵も感じられず、今はもう荒れ放題のただの廃墟。どうやらマハリシは九〇年にオランダに活動拠点を移した際に、税金対策でこのアシュラムを放置してしまったらしい。そして九七年以降は政府の森林局の管理下に置かれ現在に至っている。

 わさわさと繁っているブッシュからいきなりベンガル虎が出てきてもおかしくないような佇まいだ。時々頭上の枝がザワザワするのにビクつくが、どうやら小さな猿のようでホッとする。しかし虎とは言わないまでも、蛇くらいは居てもおかしくない雰囲気なので(実際にいるという噂も)、足下には絶えず気を配りながら小一時間かけてアシュラム内を二往復し、気になった箇所を色々と撮影してきた。今回のシーケンスでは「ビートルズの・・・」という枕詞は抜きにして、自分が純粋に興味を持ったもので構成してみた。

 一番気になったのはドーム型の瞑想施設だ。入口近くから河沿いのマハリシ邸の近くまで密集してており、その数は百以上。ジョン・レノンのラッキーナンバーであるNo.9ドームを入口ゲート近くで見つけたものの、構図的に好みでなかったので別のドームを撮影した。ちなみに「九」は中国でも陰陽思想の影響で縁起の良い陽(奇数)の極数とみなされて、ラッキーナンバーとされているし、歳差運動、たとえば地軸が一周するのにかかるのは25,920年、30度で2,160年、15度で1,080年、1度で72年であり、それらは全て「9」で割り切れる。さらには北欧の伝説やシュメールの粘土板古文書、エジプトの大ピラミッド、マヤのロングカレンダー、インド神話のリグ・ヴェーダなどにも歳差運動の数字が散りばめられており、「9」という数字は地球創造の秘密と大きな関係性があるという説もある。
 さてこのドーム型の瞑想施設だが、一階はバスルームと寝室、二階が瞑想スペースとなっている。こぢんまりとした佇まいで居心地は良さそう。茶室的な感覚。昔に暮らしていた都内のロフト付きの狭いアパート、さらにはオーストリアのアッター湖畔やヴェルター湖畔のマーラーの質素な作曲小屋や、ル・コルビュジェが晩年を過ごした南仏カプ・マルタンの休暇小屋も思い出した。狭い場所は集中力が増して、瞑想はもとより、クリエイティブな制作作業にも好都合だ。外壁の石がゴツゴツした感じは、仏像の螺髪(らほつ)を彷彿とさせ、さらに上部の外壁にはデーヴァナーガリー文字が形取られていたりして、なかなか手が込んでいる。
 このアシュラム廃墟は今後取り壊されて、星付きの観光ホテルが建設される話も挙っているそうだ。廃墟の滞在は感極まるほどのものではなかったが、取り壊される前に撮影出来たことはよかった。ビートルズに夢中だった中学生の頃から気になっていた場所だけに、長い時を経てやっと訪問できたのだから。

 BGMは、今回の作品の楽曲制作で一番最初に取りかかったもの。廃墟的な退廃感を音で表現してみた。心の師匠、武満徹氏のことが制作中に頭に浮かんでいた。こういったアブストラクト的な質感の方が、自分が作る映像との相性が良い気がしている。ポップな楽曲だとカラフルなメロディラインやコード進行、そして歌付きだと歌詞が強く主張してしまい、映像とぶつかってしまいがちなのだ。

 


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