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roma tribe

(画像【左】バンジャラ族の女性 /【右】ガドゥリヤ・ロハール族。「世界のジプシー/N・B・トマシェヴィッチ(恒文社)」から引用)



 二四〇近くあるインドの部族(※1)の中で、ロマとの繋がりを強く感じさせられるのがバンジャラ族 Banjara である。バンジャラ族はアフガニスタンの険しい山を通って、二三〇〇年前にラジャスタンの砂漠地帯に移動してきた部族といわれている(指定部族としてはオリッサ州に含まれる)。
 十四世紀になると、ムガール人の有力者は北インドからバンジャラ族を集めて南下を始めた。デカン高原を占領するにあたって自軍のための武器や食糧を彼らに運搬させたことから、バンジャラ族はデカン高原に定住化することになった。
 今日バンジャラ族の漂泊する生活様式は変化しつつあり、建築現場で道路工事や煉瓦運びに従事したり、家畜を捨て、農業に不適な荒れ地の村落に住み着いて、砂糖キビの精製などの季節労働に従事して生計を立てている。彼らの伝統的な慣習や風習や儀式は少しずつ変化しているにも関わらず、放浪本能は依然残っている。彼らは仕事を手に入れるために一時的な集落を作り、泥や竹を材料とした簡素な家を建て、臨機応変にどこでも移動する。自分の所有物をほとんど持たず、土器、小さなキルト、竹製のマットや木製の品物を製作する。また数は少ないながらも、真鍮や銅の容器も作っているようだ。若い世代は都市部で定職につきたがる傾向があり、ハイデラバードでリクシャードライバーなどの定職に就く者もいる。彼らは公式にはヒンドゥー信仰であるが、根本には偶像崇拝である。
 バンジャラ族の女性のファッションは他の部族よりもより一層際立っている。インデアン・パイサを縁に沿わせたスカーフ。髪飾りにはラクシュミー神の身代わりとされる子安貝。アルミニウムや銀で作った長いイヤリングや足首につけたアンクレット。金属製のブレスレットは既婚の印であり、一年ごとに一個ずつ加えて行く。ブレスレットの数で婚姻暦が分かるのだ。そして魔除け(さらに動物避け)の意味を込めた数多くのミラーワーク。刺繍を施すのは、灼熱の太陽での移動で布がすぐに傷んでしまわないように耐久性を増すという漂泊民の知恵なのである。その刺繍の模様の違いが各部族のアイデンティティともなっている。

 ガドゥリヤ・ロハール族 Gadoliya Lohar は、ラクダや牛を使って荷馬車で放浪する部族である。鍛冶屋を生業とし、かつてはマハラジャやその軍隊用に武器作りをしていた時代もあったが、今では金属製の壺と皿を売ってわずかな収入を得ている。ガドゥリヤは「荷馬車」、ロハールは「鉄」ないし「銅」の意味である。ロハール族の女性は、移動しない6月から9月の定住期間を利用して、市で買った(もしくは綿畑から失敬した)綿を糸車で紡ぎ、自分たちの長いスカートや家族の着るものを作る。彼女たちを特徴づける衣類の鮮やかな染色は、植物や草木から採集されたものである。
 現在ルーマニアでごくわずかに見られる幌馬車生活の放浪ロマ(今では彼らの大半がキャンピングカーを使用)とガドゥリヤ・ロハール族の生活は酷似しており、さらにルーマニアのロマが作る壺や皿などの金属製品が、ガドゥリヤ・ロハール族の作るそれと全く同じ物であったという報告例もある。ロマのルーツが、ラジャスタン地方であることが想像に難くない(※2)。トニー・ガトリフの映画「ラッチョ・ドローム」でもラジャスタン地方から荷馬車を用いて西へ移動するロマや、刃物を鋳造するシーンなど、ガドゥリヤ・ロハール族を思い出させるシーンをいくつも見ることができる。


【2010.9.7追記】ガドゥリヤ・ロハール族については、本ブログ内記事『ザ・ラジャスタン』音楽紀行 #005:テント集落のロハール族 でも触れているので、ご参考頂きたい。
 彼らが放浪生活を始めたのは、どうやら十六世紀半ば以降のようであり、ロマ民族が流鏑の旅を始めたとされている十世紀から十一世紀前半に西方へ向かったのは、あるいは別のグループであったのかもしれない。


(次回予定『黒いマリアとカーリー神』/毎週木曜更新)
grayline

※1. 以下にラジャスタン地方周辺の重要な部族をいくつか列記しておく。
・ビール族:ドラヴィディアン族を起源とするラジャスタンの先住民族。言語学的側面からロマとの深い関係性も指摘されている。
・ブラフマン族:ドラヴィディアン族を起源とし、ヒンドゥーの祭祀を司る祭司としての職を努めた先住民族。
・ラージプート族:マハラジャ直属の武士階級として戦った誇り高い民族。
・メグワール族:ハリジャンの名をガンジーから与えられたラジャスタンの先住民族。
・ジェッツ族:イランから移住してカッチに住むムスリムの民。
・ラヴァリ族:マハラジャに使え、高度な刺繍の芸術性を持つラジャスタンやグジャラートの民
・アヒール族:クリシュナ王の子孫

※2. ジャイサルメール在住のインド人によると、現在のガドゥリヤ・ロハール族はジャイプールやウダイプールで暮らし、今でもキャラバン(その形態は不明)で移動する生活を続けているようである。ジャイサルメールにも二~三日間滞在することがあるそうだ。


















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