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#001:車窓にて

 デリーからジャイサルメール行きの夜行列車 DLI JSM EXPRESS に飛び乗り、ホッと一息ついたものの、気持ちはどこか沈んでいる。前年と同じ時期に、同じ目的で、同じ場所に向かうといった多少ウンザリとした気持ちと、今回はどうしても失敗できぬという憔悴感があふれ出す。やがて列車は定刻より十五分遅れでデリーを出発。無骨な軋み音を立てながら、インド北西部の砂漠の地ラジャスタン地方へと向かい始めた。
 車中、この旅で初めて音楽を聴いてみたくなった。持参した携帯音楽プレイヤーの六千曲近くのストックの中から無作為に一曲だけ選曲してみる。ボブ・ディランの「ラヴ・マイナス・ゼロ」。


 My love she speaks softly, (彼女はしずかにしゃべり)
  She knows there's no success like failure, (失敗みたいな成功はないし)
   And that failure's no success at all. (失敗は成功でないことを知っている)

(ボブ・ディラン全詩集/片岡ユズル・中山容訳)

 前年の同じ時期にラジャスタンを訪れ、そして失敗した。現地で細菌性の酷い下痢に悩まされ、撮影はおろか楽士たちとの交流すらままならなかった。悔しさと失意を背負って一年後に再チャレンジ。成功などハナから期待していない。だが成就せねばならぬ。このプロジェクトは誰から何と言われても(いや誰も何も言わないだろうが)、完成させねばならない。
 「たったひとりで音楽映画が作れるのか」「いや無理だ」「やってみなければ分からぬ」「でも壁だらけ」・・・・こんな自問自答を繰り返しながら無為に日々を過ごす。ひとりでは何もできないことなど充分に承知している。だがこれは自己完結せなばならぬプロジェクトなのだ。こんな負け戦にあえて挑もうとする、己の退っ引きならない精神とは一体何なのだろうか。

 かくして敗者復活の音楽旅は始まったのである。

(写真:デリー近郊のスラム街。DLI JSM EXPRESSの車窓より)


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