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Raj_006

 ラジャスタン地方には数多くの伝統芸能や民族芸能があるが、ジャイサルメールではその中でもマンガニヤール、ボーパ、ジョーギー、カルベリアの土着的な民族音楽や舞踊を撮影したいと思っていた。まずはマンガニヤールだ。

 マンガニヤール Manganiyar は 音楽を生業とするコミュニティーで、バールメールやジャイサルメールに数多く存在し、またパキスタンとの国境を越えて存在している。彼らの大部分はスンニ派のイスラム教徒であるが、ヒンドゥーのパトロンたちに仕えて生活を営み、インド独立後から現在に至っては、祭りや結婚式などでも演奏したり門付けや物乞いによって生計を立てている。マング=物乞い、ハール=暮らし、の合成語にその名は由来し、「世界の創造と破壊を司るヒンドゥーの神」シヴァによって創造された民を自ら名乗る。大変高度な口頭伝承の文化を保ち、世代を通じて伝達されている数々の歌や、使用する楽器(弦楽器カマイーチャ、両面太鼓ドーラク、打楽器カルタールなど)は典型的で地方色が強い。(参考資料「ジプシーの来た道/市川 捷護(白水社)」※一部を修正引用)

 余談ではあるが、スペインのヒターノ(ジプシー) は、サンスクリット語(梵語)の系統を引くロマニ語とスペイン語がミックスされたカロ語を話すが、その中で「頼む」「乞う」の意味を持つマンガール mangar という言葉があるのが興味深い。インドとスペイン南部のアンダルシアとの繋がりをここでも垣間みることができる。

 前回の滞在でも、ゲストハウスやカラカール・コロニー(芸人居住区)のヒルトップでマンガニヤールのセッションを撮影したが、細菌性の下痢を伴う酷い体調での撮影だったため、余裕がなく全く楽しめなかった。ジャイサルメールにはこのカラカールコロニーと街の北西部の二箇所にサンセットポイントがあり、両者とも雄大なフォートを背景にした構図では日没前の太陽の位置がほぼ逆光に近く、プレーンな画を欲する通常の撮影ではあまりよい結果にはならない。今回は街中で撮りたいと思うシチュエーションも特に思い浮かばなかったので、楽士の質が高いとされているカノイ村のマンガニヤールに会いに行くことにした。

 コーディネーターは滞在ゲストハウスのオーナーのカマル。前回も同じゲストハウスに滞在して気の置けない間柄だ。ジープのドライバーはアユーブという寡黙な男を紹介してもらったが、彼が楽士の情報網を持っていて実によい仕事をしてくれた。TATA製の4WDジープに乗って街の西に位置するカノイ村を目指す。三月中旬とはいえ、出発した午後過ぎはもう四十度を超える暑さだ。
 走ってすぐにガソリンを補給。ガソリンの相場はジャイサルメールでは一リッターあたり五十三ルピー。ジョードプルでは五十一ルピー、デリーでは四十七ルピー(二〇〇八年三月現在)。砂漠に近づくにつれ値が上がる。原油高が進む今となっては相場がさらに高騰していることだろう。
 十分ほど走ってムールサガル村近辺でいきなり停車。砂漠の中で数件の集落がぽつりと建っている幽闃(ゆうげき)な風景が印象的だ。どうやら定住しているジョーギーの集落のようである。子どもたちが数人車の辺りに集まってきた。ドアをロックしていなかったので、そのまま車内にまで入ってくるほどの勢い。その度にカマルが大声で叱りつける。それでも子どもたちは怯んだ様子もなく、私から何か収穫を得ようと元気一杯にはしゃいでいる。逞(たくま)しい。
 アユーブが集落の中の一件を訪問して、車の足元用のゴム製マットレスを購入してきた。ジョーギーはこんな仕事にも携わっているのかと意外な気がした。ジョーギーについては後の記事で詳しく述べるが、蛇つかいを生業とし、村から村へと門付けをするコミュニティーで、定住するグループと砂漠を周遊生活するグループ等がいるようだ。アウトカーストのため、両者とも村から離れたところにひっそりと住居を構えている。何もない砂漠の中にブッシュの屋根と石壁で造られた数件の小さな住居がぽつんと建ち並ぶ光景は、栄辱得喪(えいじょくとくそう)の垢にまみれて生きている自分には、排他性やもの寂しさよりもむしろ悠然とした仙境のような印象すら受けた。(次回に続く)


(写真:カノイ村へ行く途中に立ち寄った定住ジョーギーの元気一杯な子どもたち。財産を身につける風習を持つジョーギーだが、子どもですら装飾品や派手なドレスで着飾っている)


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